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「まあ、そうじゃないって今ならわかるけど」

全てを出さなくても、それはその場しのぎや偽りではなく、相手に合わせたり、相手によって態度を変えたりできるのも、それは友達だからであって。

何も全てをさらけ出せる関係だけを友達とは呼ばないんじゃないかな。

「ところでさぁ……」

照りつける太陽がジリジリと痛い。

俊也が作る一瞬の“間”と深い“呼吸”で知らないうちに汗をかいていた。


「――俺たちは友達?」

それは夏に相応しい、高校球児が投げる直球。

ボールだったら受け止めきれなかったんじゃないかな。

そんな風に思った。


「それは男女の友情が成立するかという永遠のテーマ的な質問?」

がむしゃらに振ったバットに当たった球は大きなアーチを描いていた。


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