against
「そう思いたいならそういう事で」

俊也はあからさまにふて腐れていた。ツーベースヒット。

「じゃあ男女の友情はあるか、ないか」

またも直球。

ボールが眼で追えないほど速いんじゃない、私はこのボールを見たくないんだ。

思いっきり振ってしまえば入るかもしれない。見送ればまた、はじめられる。

追い詰められているわけではないのに振らずにはいられない球のような、勝負しなくてはいけないと思ってしまうような言葉を、私は聞きたくなかった。

進まなくてはいけない時間の中で俊也とここで過ごす時間がどれだけ大切だったか。

ただの傲慢なんかじゃない。

同じ気持ちと時間を共有したからこそ、あなたもそうであって欲しいと思っていた。

大切だから絶ちきるのか、絶ちきらなければ進めないのか。

どう転がっても勝負には勝てなくて。

本気で向き合えない自分が負けるのは目に見えていた。わかってたって振ってしまうストレートこそが魔球なのかもしれない。



「キスでもすればわかるんじゃない?」












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