against
俊也がどんな顔をしてるか想像がつく。

怒ったように呆れて、それでも放さず私の気持ちを読み取る。


「試してやろうか?」

ほらね。君は笑ってそう言うから。

未来を見てみたいとちょっとだけ、思うんだ。


覚悟を決めきれない小さな呼吸を吸い込むのを知っていたかのように、私が息をするのと同時に俊也は私の腰に手をまわしていた。

体を流れる血液が、移動したことすらわからないほど心臓に血を送っていたのか、ふわりとした手のひらで私の頭は支えられ、いつの間にか俊也の顔越しに空を見ていた。

恐る恐る目線を合わせると、腰にあった手がそっと頭を撫で、前髪かきあげる。

私、どんな顔してる?

自分の感情がどこへ向いているのかわからないのに俊也は、俊也だけは私の気持ちをわかってくれているような気がした。

このドキドキを君はきっと。


「笑うなよ」



重ねられた温かい唇は何かを探すように、何かを求めるように、微かに震えていた。



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