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目に映るものが全てこんな景色だったなら。

小さな水溜まりに落ちてしまった、ビニールの傘に気付いていたのかな。

黒髪から滴り落ちる水滴を拭えなかったけれど。

君から溢れる雫に気付いていたんだよ。

あの綺麗な景色は、君を含めた景色だったから。

だからきっと君を好きになれたんだ。

はじめて時間が止まればいいと思った。

過去や今を全部捨てて、未来だけが頼だった私が

唯一、続けばいいと願った時。

もしも時を止める魔法が使えるなら

あの時を止めたかった。


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