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放課後、宣言通り綾菜は彼氏の車で帰ったため、今日も重たい鞄を持ちあの場所へ向った。

落ちてしまった花びらたちは、もう桜色をしていなかった。

踏み付けられたあの色のように、どれも無惨に形もわからないくらいになっていた。

それを見下ろすかのように、日に日に大きく色濃くなる若葉は、周りの葉の緑と同化し、混ざり合う。

そんな緑は嫌いじゃない。私と同じだから。

ベンチは西日で乾かされていた。

用意しておいたタオルを敷いてその上に座ると、何だか涙がでるほど嬉しかった。

涙……昨日のキラキラ輝く雫を思い出す。

あの学ランの子はびしょ濡れだった。随分、ここに居たんだろうか。

学ランということは、私と同じ高校?

近くには学ランの中学校もあるが、背格好がどうしても中学生には見えなかった。

何でこんな地元の人でも来ないような場所に居たんだろう……うーん……って。

まるで昨日の事が夢だっかのような、静かで輝く事のない辺りを見て、探偵ごっこをやめた。

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