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最近の『今日の終わり』は何だか後味が悪い。

プシュッと音を立てて扉が開くと、綺麗な月が出ていた。

家までの道のりがやけに長く感じる。

いつの間にか私は、あの階段を上っていた。きっと綺麗な月が近くで見たかったんだ。

あの日からずっとここへは来ていない。

信じているはずの未来を疑っているのだろうか。

疑うと言うよりはやっぱり恐くて。

こんな月でも出ていなければ、今日も私は真っすぐ帰っていただろう。

「あれ?」

階段を三分の二くらい上がってきただろうか。

私の目指すゴールで、君は真っ黒なシルエットで現れた。

きれている息をバレないように、一気に最後まで上る。

「今から? 見えねぇだろ」

そう言って、さっきまでは階段を下りようとしていた男は私の後をチョロチョロと、子犬のようについてきた。

「見えるよ」

特等席に座ると、目の前には輝く星と月。生のプラネタリウムがそこにはあった。

「何が?」

男は今日も学ラン姿で、隣のベンチに片膝を抱えて座った。

暗くて顔は見えないけれど。

「――未来」

小さく小さく輝く空に、まだ冷たい夜風。初めて君と話してみたくなった。

私はたぶん賭けに勝ったんだ。真実は死ぬまでわからないけれど。

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