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時を待たずに歩き出す昇降口までの廊下は、やっぱり今日も混んでいて。

それでも『今日』を早く終わらせたい私は、こんな人込みを嫌いではない。

しょうがない事だから。


「ねぇ、学校出た所にクレープ屋さんできたらしいよ」

やっと上履きをローファーに変えたところで、綾菜は口角の上がった薄めの唇を更に上げて言った。

「え〜食べた〜い。いこいこっ!」

奈津美がよく上がった睫毛をパチパチさせて、私のセーターを掴んだ。

今日が終わるのが少し遅くなった。

「いいね〜いこ〜」

ニカッと笑って言える自分に笑える。


昇降口を出ると、ポカポカと放課後の香がする。

『放課後』結構好きな言葉だ。

こんな日でなければ。

「あ〜ほんとだ。かわいい」

奈津美の言葉に下を見ると、さっき綾菜が言っていたクレープ屋と思われる、ピンクと白のメルヘンなワゴンが目に入った。

私が通うこの高校は小高い丘の上にあり、遠くまで見渡す事ができる。

少し長い坂が学校の入口。
緩やかなその坂はこの時を表しているようで、一年以上、上り下りを繰り返していても好きにはなれない。


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