against
奈津美だってそうだ。

いっつも少しの風じゃ取れないくらい、上手に髪を巻いている。

どんなに巻いてもすぐにストレートに戻ってしまう私は、昼休みなんかによく奈津美に巻いてもらうくらい。

でも今日の奈津美は、さっきの緩やかな風だけで、手の届きにくい後ろの方のカールが、珍しくゆるくなっていた。

目に映る変化。

この位置だから気付いたのか。それとも、あの腕時計を腕に巻くのも、鞄に入れるのも忘れてしまったからだろうか。

今日は時の流れにうまく乗れない。


こんな性格がいけない。

何も考えずに、流れるように乗れるのならば、きっとすぐにでも未来にいける。

もう待っている気にはなれなかった。

意味のない時を過ごすのは、もう十分だ。

テスト最終日。

もちろん、答えなんかわからなくて。

適当に並べた空想の答えで解答欄をうめていく。

そんな作業に飽きてしまい顔を伏せると、ひんやりした机が頬に当たり、冷たい顔をより冷たくしていった。

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