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どうにも朝の二人の様子が気になった私は放課後、二人にショッピングに付き合ってほしいと申し出た。

とくに欲しいものなんてないのに、時の流れが遅すぎて、らしくないことをしてしまう。

うまく乗れたらどんなに楽なんだろう。

「うーん、やめとく」

しかし、奈津美は私の申し出をあっさり断ったのだ。

「そっか」

流れに逆らうような事はしてはいけないのかな。

そんな奈津美の様子を見た綾菜も「今日は真っすぐ帰る」と言い出した。

崩れかけたそれは止まらず、私の頭の上にドカドカと落ちてくるようだった。

帰りの道でも、電車の中でもたいした話題は見つからなかった。

真ん中の私は上手く両方に話をふるなんて出来なくて。

結局どちらか一方が黙ってしまう。

駅までの道のりも、電車に乗っている時も、時が止まってしまったようにゆっくりで。

これが流れに乗ると言うことならば是非とも逆らいたいと思った。

豪雨の時の川のように、一気に落ちるジェットコースターのように。

流れるならば、落ちるならば早い方がいい。

綾菜の降りる駅に着き、いつもより小さな声で綾菜を見送った。

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