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ガッコンと大袈裟に停車して、駅に着く。

今日は何だか大人しく。そっと地面に足をつけるように、電車を降りた。

まだまだ日は高くて。

風も吹かない穏やかな空気がやけに憎たらしい。

いつものように裏手の改札をぬけると、珍しく携帯が揺れた。

鞄の底の方まで移動してしまったそれを探しながら、マナーモードのままだったなぁと思う。

激しい震えのせいで、マナーモードとは言えない音を出している携帯を、ようやく見つけだし、手にする。

サブの小さな画面には『綾菜』の文字があった。

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