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「風邪?……で、どうしたの?」

なかなか言い出さない綾菜に変わって、私が話し出す。

『うん、風邪かも。 で、あのさ……奈津美……なんか怒ってる?』

「ん?」

自分でもマヌケな声を出してしまったと思う。そのマヌケな声でごまかせたら、なんて。

「う、うーん」

『やっぱ怒ってんの?』

はっきりしない私、綾菜はさらに私を追い詰める。

『何に怒ってんだろ』

一見、人の気持ちに敏感のようで、綾菜は意外に鈍感。

それが彼女のいい所でもあり、悪い所でもある。

私はその方が、余計な詮索や気遣いをされない分、付き合いやすいと思っているのだけれど。
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