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そして、また私は答えに迷う。

言ったからって何か変わる?言わなかったからって何か変わる?

わかんない。

言ってあげるって考えもある。優しさ?相手を思って?それが友達なんだって。

でも、友達ならわかるはずって考えもあって。相手を試す?相手を思って?それが友達。

全部、嘘じゃん。

結局は自分の居場所を確保する、言葉、相手、道具にすぎない私たち。

いつになっても答えを出す事ができない。

幸い、誰の姿も見えない辺りは殺風景で、車の音も遠くに聞こえ、電車のくる気配もなかった。

「うーん、どうしたんだろね」

私ってこういう奴。答えがわからなかったら、相手を突き放す。

突き放すっていうより、とにかく簡単な方へ。

正直、これが簡単な方だなんて思わない。どっちつかずの微妙な言葉たちは、それでも自分を守るには最適だと思う。

「そっかー、涼子もわかんないか」

自分と同じ人間を見つけて、喜んだような声を出した綾菜は、「また明日ー」なんて弾んだ声で電話を切った。

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