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パタンと閉じた携帯電話をにぎりしめて、立ち上がろうとするけれど、腰が持ち上がらない。

ここが人の多い駅だったら、目の前の道路が太くてたくさん車の通る道だったら。

すぐにでも立ち上がり、歩きだすのに。

こんな時に限って、なかなか人には会わないし。

雨なんか降りそうにもないし。

ずっとここに居ろって言われているようで、辺りの静けさが嫌になった。

静かな場所は好きなのにな。

そーいや今日も俊也はあの場所にいるんだろうか。

道路の奥の小高い緑を見ながらそんな事を思う。
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