against
にぎりしめていた携帯を鞄のポケットにスポっと入れると、何ももたない右手は何もない左手首を勝手に触る。

はぁ。なんて、無意識にため息までもでてきて。

何やってんだろ、とか。

不意に足音が聞こえ、人の気配を感じた。これもまた無意識にむくっと何食わぬ顔で、立ち上がる。

習慣?

何してんのあの子って、思われたくなくて一歩踏み出す。ちょっとでも世の中から浮く事のできない私。

その考え自体が本当は浮いているという事に、気付かないフリをして。


「おい」


左足を出した時、聞き覚えのある声がした。

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