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俊也だった。

声がする方に体を捩ると猫背をさらに丸くするように、ポケットに手をしっかり突っ込んだ俊也がいた。

またあの場所にいたのだろうか。

いつも電車なのだろうか。

私は一瞬のうちに、いくつかの疑問文を思いついていた。

しかし、その疑問も疑問のまま「じゃあな」と、とくに止まる様子もなく、俊也は駅へと消えていった。

俊也が止まったとしても、私はきっと、答えを聞く事も、答えを出すことも出来ないけれど。

何だかそれが寂しいと感じて。

下を向かないように歩いた。



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