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芝の少ない足場を気にしながら、ゆっくりそっと優しく地面を蹴って、ベンチまで歩く。

ベンチの前に着いたと同時に、右手は小さめのトートバッグをベンチに、左手は指に引っ掛けたパンプスを地面に、放り投げるように落とした。

バサッやらコトンと言う音に遅れて、ドサッと私のお尻が軋むベンチに落とされる。

脚を浮かせ、小さな石や砂のついた足の裏を手で軽く叩いた。

辺りは、人の活動する時間とは思えないほど静かで。

浮かせた脚をそのまま左の手摺りにかけるため、体をずらした。

膝の裏に錆びた鉄のザラッとした感触。

後にバタンと体を倒すと、私はベンチにすっぽりはまった。

顔に当たる日差しが眩しい。

眩しいけれど、目をつぶれなくて細めた。

目が悪くなりそう。それでなくてもこの間、右1.2左0.7なんて変な診断を受けたんだから。

同じものを見ているはずなのに。

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