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握っていた左手も解いて、二つの手をいっぱいに開き、指の間から見える太陽はまだまだ高く、沈みそうにない。

虚しい掌と横にある恐怖と後悔。

耐え切れずに、あげた腕を下に勢いよく落とした。

「いっ……」

そう、ちょうど俊也の頭の上に。

思いのほか重力が手助けして当たった手の甲は、痛かった。

「なんか言え」

私は何を求めているんだろう。

でも黙られるのが、この静けさが、俊也の後ろ姿が、凄く恐かった。

「うん」

素直に頷いた俊也だけれど、やっぱりこちらは見ない。私の腕がぶつかった頭を摩りながら、また黙ってしまう。

こんなにも泣きたくなったのは久しぶりだと、隠すように背もたれに顔を埋め、ブラブラ揺れる脚もそっと縮めて、ベンチの中で小さくなった。


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