against
涙に促された鼻水をずびっとすすって反対側に体を回転させると、俊也の口元は笑っていた。

目だってきっと笑っている。

でもその垂れ下がった目が、落ち込んだ重たい瞼に見えて。

泣いてるように笑っているというのは、こう言うことなんだと思った。

もしも、もしも。

もしも、君が恋人だったのなら。

その痛々しい姿をおもいっきり抱きしめていたと思う。

抱きしめられないからこんなにも、もどかしいのか。

続きを聞くことが出来ないから、やりきれないのか。

『時が進む時計』と『時が戻る時計』

どちらもないから、痛くて苦しいんだよね。



< 79 / 163 >

この作品をシェア

pagetop