against
「奈津美今日も?」
朝のあいさつもなしに綾菜は眉毛を下げて言った。
同じ毎日を送っているはずなのに、私を追い抜く風ばかり吹いている。
「たぶん、連絡ないけど」
『戻る』のフレーズがなかなか頭から消えない数日後――
何が『普通』だったのかさえ忘れる毎日を私は生きていた。
あの日の午後から私の時計は止まったままだった。
進んでいるのは私以外で。
週の初めだったと思う。
いつもの電車のいつもの車両、私の左でも右でもない赤いシートに奈津美は乗ってこなかった。
プシュなんて音をたてる自動ドアを見つめるのにも、もう飽きて。
初めのうちは「遅刻する」とメールが届いていた。
その通りに昼休みまでには奈津美の顔を見ることができていたし、それほど気にしていなかった。
しかし今日は連絡すらない。
奈津美はこのくだらない毎日から、いち早く抜け出そうとしているのか。
朝のあいさつもなしに綾菜は眉毛を下げて言った。
同じ毎日を送っているはずなのに、私を追い抜く風ばかり吹いている。
「たぶん、連絡ないけど」
『戻る』のフレーズがなかなか頭から消えない数日後――
何が『普通』だったのかさえ忘れる毎日を私は生きていた。
あの日の午後から私の時計は止まったままだった。
進んでいるのは私以外で。
週の初めだったと思う。
いつもの電車のいつもの車両、私の左でも右でもない赤いシートに奈津美は乗ってこなかった。
プシュなんて音をたてる自動ドアを見つめるのにも、もう飽きて。
初めのうちは「遅刻する」とメールが届いていた。
その通りに昼休みまでには奈津美の顔を見ることができていたし、それほど気にしていなかった。
しかし今日は連絡すらない。
奈津美はこのくだらない毎日から、いち早く抜け出そうとしているのか。