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少しずつ、私は『戻る』の意味をわかりはじめていた。

「いこっか」

本調子ではないであろう綾菜に声をかけ、次の授業に早めに行く事にした。

次は理科室で、実験らしい。実験なんてしてもこの問題は解決することがない。

ものを教える場所ならば、答えの用意でもしておいてほしいものだ。

ここで教わるものなんて、全然使い物にならない。

教室をでるとまだ予鈴すら鳴らない昼休み。

狭い廊下を塞ぐように、私たちに敵意を剥き出しにした女の子。

仲がいいがために、浮いてしまっているカップル。

一人で歩く冴えない男。

改めて周りを見ると、いろんな奴がひとつの箱に閉じ込められていて。

気持ち悪くなった。

なんで私はここにいるんだろう。

足早に廊下を進み、少し熱の冷めた階段の前まで一気に抜けた。

「うん?」

階段をあがろうとした時、私のかかとあたりに何かが当たった。

「涼子?」

私が急に足を止めて足元を見たので、綾菜も私の足元をまじまじ見ていた。

「何で?」

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