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綾菜に続いて階段をあがると、後から俊也のものと混ざり合う笑い声が聞こえた。

学校で俊也を見るのは初めてだな……わからなかっただけかもしれないけれど。

楽しそうに、友達とも、綾菜とも話す俊也は『戻る』なんて言葉は無縁な気がした。

「涼子、長谷川くんと知り合いだったんだ?」

振り向き笑いながら、綾菜は口角をあげて柔らかく言った。

「長谷川くん?」

「さっきの子だよ〜」

俊也のこと?長谷川なんて苗字だったのか。

しかし、綾菜や奈津美はどこで隣のクラスの男子の名前を知るのだろう。

「知り合いじゃないよ、綾菜の知り合いでしょ?」

しれっとした顔をするのが精一杯で。

バレてやしないか内心ドキドキしていた。

俊也と知り合いということ自体はそれほど問題ではない。

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