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耳を塞ぎたくなる気にさえなり始めた頃に、やっと三階にある理科室へ到着した。

誰もいないシンとした教室に入った頃には、綾菜は違う誰かの話をしていて。

冷たくて固い丸イスに座って、真っ白な大きい机を目の前にすると、よけいにテンションはあがらない。

おしりにあたる背もたれもない、イスの感触が気持ち悪くて。

予鈴が鳴る頃にはどこからともなく人が集まり、きっちり納まる教室は、窮屈だった。

普段話もしないようなクラスメートと、机を囲み。

指示された実験は、とくに試してみたいものではなかった。

試すとしたら、綾菜に彼氏がいなかったら?とか、奈津美に彼氏がいたら?とか、俊也も私もあの日あの場所にいなかったら?とか……

『戻る』実験がしてみたい。

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