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車内に入ると、赤いシートの硬い椅子に私が右、奈津美が真ん中、綾菜が左に座る。

いつもの順番。

降りる順番でもあるんだけど。

昨日のテレビの話、今日の授業の話、好きな人の話……

車内でも誰ひとり口を閉じる事なく、三駅と短い時間で綾菜に手を振る。

もう少し。

気を抜かないように。それでも腕に巻かれる時計、外の夕日が気になる。

そうこうしているうちに、奈津美の降りる駅に到着する。

電車に乗っている時間は早く感じられる。動いているからかな。

奈津美に「また明日」って言いながら手を振り、後ろ姿を見届けると、意識もしていないのにふぅーっと口から漏れる。

今日が終わった。

シートに擦れ落ちるほど浅く座る。

今からは明日への時間。

腕にある金色の針は四時半を過ぎた頃だった。

今日は時間がないかな。

早く夏になるといいんだけど。

キラキラ輝く腕時計はまだまだ夏を示さない。
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