against
一限目が終わろうとしていた時、周囲は休み時間をまつクラスメートでざわついていた。
ほんの数分のことだけれど、早く切り上げてくれるこの先生はいい奴だと思う。
机に教科書を詰め込み、奈津美の席に向かおうと椅子をひく。
休み時間の習慣、無意識にそうしてしまっている。
立ち上がるとほぼ同時に、うるさい声に負けないチャイムが鳴り響く。
一歩踏み出した時だった。
「江崎――」
ガラッと音をたて、開かれた教室のドアから、少し太い男の教師が顔を出す。
このクラスの担任だった。
江崎――担任はその後、「ちょっと」と手招きしている。
その言葉に私は足をぴたっと止めた。
私が今から向かおうとしていた席の主、奈津美がいつもの怠さなんて感じさせずに、静かに立ち上がり、私の斜め左を横切ろうとしている。
スローモーションのように見えるその光景を口を開けて観賞していた。
奈津美の目には私は写っていないようで、そんな横顔が少し大人っぽく見えてしまう。
「な、つみ?」
担任の前にたどり着くか着かないかという時、私は彼女の名前を確かめるように呼んでいた。
ほんの数分のことだけれど、早く切り上げてくれるこの先生はいい奴だと思う。
机に教科書を詰め込み、奈津美の席に向かおうと椅子をひく。
休み時間の習慣、無意識にそうしてしまっている。
立ち上がるとほぼ同時に、うるさい声に負けないチャイムが鳴り響く。
一歩踏み出した時だった。
「江崎――」
ガラッと音をたて、開かれた教室のドアから、少し太い男の教師が顔を出す。
このクラスの担任だった。
江崎――担任はその後、「ちょっと」と手招きしている。
その言葉に私は足をぴたっと止めた。
私が今から向かおうとしていた席の主、奈津美がいつもの怠さなんて感じさせずに、静かに立ち上がり、私の斜め左を横切ろうとしている。
スローモーションのように見えるその光景を口を開けて観賞していた。
奈津美の目には私は写っていないようで、そんな横顔が少し大人っぽく見えてしまう。
「な、つみ?」
担任の前にたどり着くか着かないかという時、私は彼女の名前を確かめるように呼んでいた。