against
シンとした教室が一瞬にしてもとに戻る。

「ねぇ、何があったの?」

ざわざわと騒がしい教室の片隅で、綾菜が私のセーラー服の袖を掴んだ。

「わかんない」

私が聞きたいくらいだよ。

そんな事、誰に聞かなくても自然に耳に入ってきてしまう。

昼休みの頃にはみんな知っていた。

その話が、いつも一緒にいた奈津美の事じゃなくて他人事に聞こえた私は、友情なんて言葉のわからない奴なんだって思う。


『江崎さん、停学だってね』


雲行きは最悪で。100%雨。そんな事がわかってしまうような、真っ黒な雲の広がる昼下がり。



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