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まだ授業中の高校生が一人、走って電車に飛び乗ったって、誰に迷惑をかけるわけでもない。

道ゆく大人たちに注意もされない。

こんな田舎じゃ警察に会うことのほうが珍しいし。

運悪く会ってしまう人もいるけれどそれは本当に『運』だけの問題な気がする。

見つからなかったら?

人は何をやっても許されてしまう気さえした。

人が人を裁こうとするのがはじめっから間違いなんだ。

でも堂々と歩けないのが人間で、私。

矛盾した世の中で、矛盾する思考を連れて、隠れるようにいつもの階段を駆け上がった。

少し急いでいる自分の足が笑える。

慣れない事はするもんじゃない。

いくら嫌いな場所だって逃げ出した事は、ない。

それが私の誇りだった。

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