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俊也はこれからどんな力説が繰り広げられるのかと思うほど、力が入っているようだった。

それなのに、眉間に皺を寄せ、睨むように視線を下に移しているだけで。

だから私は疑問を投げかけた。少しでも彼が言葉を発するように。

「――その絶対許せない事が罪になるのかな」

でもそれだと奈津美のした事は私にとって罪ではなくなってしまう。

「許せねぇ事だって罪にならない時だってあ、る……
――つか、江崎ってお前の友達だよな?」

話をあからさまに反らされた気がする。

それなのに『お前の友達』というフレーズに話を戻す事ができなかった。

「うん」

これは決意にも似た、宣言のようなもの。

「停学にはビビるよな、乗ってただけなんだろ?」

「らしいね」

確かな事は言えなかった。私も、きっと俊也も聞いただけの話だから。

だって奈津美のイメージじゃない。

「わかんねぇな」

「わかんないね」

俊也が同じ事を「わからない」と言っていることだけは、わかった。

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