地獄的恐怖鬼ごっこ
「あ、あれ、私入ってた」

今更ながらに私が校舎内に足が入っていたことに気づく。

最初から言っておけば、みずきが怒ることも無かったんだけど……。

「はぁ。もういいよ。入れるのは分かったから」

そう言うと、みずきはずかずかと、躊躇いもなく校舎の中に入っていく。何があるか分からないのに堂々と入っていけるのは、少し尊敬するというか、凄いと思う。

「誰かいるか!? 正木だ!」

正木は少しだけ校舎の中に入って、大声をあげた。

「しっ、鬼に見つかるでしょ!?」

私は慌ててまた何かを言おうとした正木の口を塞ぐ。少しだけ押さえるのが強すぎたのか、正木は私の腕をパンパンと叩いた。

「ご、ごめん」と咄嗟に謝る。

私と正木の先を歩いていたみのりとみずきの足が止まった。何やらこそこそと話しているようだ。

「足音……」

みずきがそう呟いたとき、私と正木はハッとして足を止める。

これで全員が止まったはずなのに。

足音が聞こえる。

「おい、何か喋れよ、鬼じゃ、ないだろ……?」

正木はそう言っているものの、ほとんどは自分に言い聞かせていて、本当は、その正体に気が付いている。

冷たい空気。明らかに雰囲気が違う。

その異様な雰囲気に、鳥肌がたちそうだ。

でも、行動しなきゃ。逃げなきゃ。

脳の中ではそういう風にサインを送っているのに。

なのに、体が動かない。ガタガタと震え、最初の一歩が踏み出せないでいる。

これじゃあ、死んじゃう……

「校舎内に逃げて!!」

みのりは逃げた。正木とみずきも後に続く。

鬼はまだ気が付いていない。

だけれど、みのりは私が未だに走り出せていないことに気が付き、私に駆け寄って、手を引く。

「ありがとう……」

私はその勢いに乗って、自分から走り出せることができた。


「いっ!!」

叫び声と共に、鈍い音が廊下内に響いた。


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