地獄的恐怖鬼ごっこ
「放送を聞いてないの?」

一人の女の子が驚いた表情で言う。

まあ、トイレには放送が流れないし、途切れ途切れにしか聞こえなかったから……。


「この学校のどこかに鍵が隠されてるの。そして校内には、4人の鬼がいる」

ということは、鍵を見つけないと校内からずっと出れない。

校舎は三階建てが二つと、体育館へ続く道が一つ。

七つの廊下に一人ずついるとしたら、鬼と出会わない可能性のほうが低い。

今もだれか襲われている……ということだろう。

考えるだけで少し怖くなって、考えるのを後悔した。

「早く見つけないといけないじゃん」

みずきは焦った表情で言った。

「これだけ人数がいるなら鬼に注意するだけでいいのに……。誰かが見つけてくれるよ」

女の子は「正気?」とでも言いたげに、困ったような顔をした。

「早く出たいし。みのりと正木にも会わなきゃ」

そのみずきの言葉に、ずっと黙ってこっちの話を聞いていた男子が反応した。

「その二人ならいたよ? ほら、すぐそこの理科室に」

その言葉にハッとして、私は小走りで理科室に向かう。

扉のおとなんてお構いなしに勢いよく開けた。

「あやか、みずき!!」

教室の隅っこから声がした。

見ると、正木とみのりは、少しだけ距離感があったが、二人で縮こまって座っていた。

「良かった。二人とも追われてたし、メールにも反応しないから、心配だったんだぞ」

正木は大きく息を吐きながら床を見つめていた。

「鍵、見つけるんだよな?」

正木は頬杖をつきながら、誰の目も見ずに言った。

「当たり前でしょ、早く行動しないと」

みのりは得意気な顔で、嬉しそうに微笑んだ。
< 50 / 73 >

この作品をシェア

pagetop