外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私は小さな溜め息をつき、パンフレットを閉じた。
頬杖をついて、窓の方にボーッと目を向ける。
相変わらずどんよりとした外の景色を眺めていると、店員さんがサラダボウルと紅茶を運んできてくれた。
テーブルに散らかしていたパンフレットを搔き集め、膝の上に置く。


空けたスペースに、店員さんがボウルをサーブしてくれる。
伏せた伝票をテーブルの隅っこに置いて、離れていく。
気を取り直してフォークを取ると、それと同時に、テーブルの端に置いておいたスマホが、着信を知らせてブブッと振動した。


プチトマトを口に運びながら、何気なくスマホを手に取り、画面を確認する。
そして私は、ほとんど咀嚼しないまま、ごっくんと飲み込んでしまった。


タイミングがいいんだか悪いんだか、着信は藤悟さんからのメールだった。
内容はもちろん、次のお稽古の日程について。


『都合はどうですか? 返事お待ちしてます』


最後の一言を見て、私は無意識に目尻を下げた。
藤悟さんは、律儀な人だ。
意地悪もされたし、からかわれもしたけれど、『七瀬さんを周防の嫁として教育するんだから、俺は義兄として協力するよ』との言葉通り、こうして親身になってくれる。
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