外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「……ねえ。やっぱり、旦那さんの耳にも入れておいた方がいいよ」


声の届く範囲に人がいないとわかっていても、なつみは私に距離を詰め、辺りを憚ってさらに声を抑えて言った。


「大事な七瀬が、オフィスで謎のストーカー被害に遭ってるなんて。心配するだろうけど、知らせずにいていいことじゃない」


彼女が続けた言葉に、私もゾクッとして、思わず両肘を抱え込んだ。


『オフィスで謎のストーカー被害』――。


そう。それは、この二週間ほどで、私の周りで起きている不審な出来事だ。
初めてその『サラリーマン』が、私を訪ねてきたと聞いたのは、先々週の月曜日のこと。
その後はなにも聞かなかったから、気に留めることもなく、今週に入るまで私もすっかり忘れていた。


ところが、今週の月曜日に、私はまた、同様の訪問者の話を聞いたのだ。
それだけなら、よほどの用があるなら、また月曜日に来るかも?と、首を捻って済ませることができた。
しかし……。


『その人、先週私が受けた人と同じかも。すみません。『いらっしゃらないなら』って、すぐ帰っていかれたので、お伝えし忘れてました』


話を聞き留めた後輩二人が教えてくれて、私の全身にゾワッと鳥肌が立った。
つまり、この二週間で四回、その『サラリーマン』は私をオフィスに訪ねてきていたのだ。
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