外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
そのすべてが、私の不在時。
特に私に実害はない。
でも、短期間で随分と頻回だ。
なにか私に用があるんじゃ?と思うのに、その『サラリーマン』は一度も名刺を置いていかないそうだ。


『なにか、変な人だったら気持ち悪いよ』


私というより、同僚たちに迷惑がかかる。
みんなの勧めもあり、昨日の帰り際、直属の上司である課長にも報告していた。
そしてまさに今日、なつみが初めて、その『サラリーマン』の応対をしたというのだ。


「みんなが言ってたのと、同一人物だと思う。確かに、『この辺歩いてる分には特に目立たない、普通のスーツ姿のサラリーマン』としか言いようがない」


彼女によると、ちょっと冴えないくたびれた感じの男性で、歳の頃は四十代前半。
少なくとも、『通りがかりにちょっと訪ねた』、私の知り合いには見えなかったそうだ。


「ご両親とか、旦那さんの実家の関係の人かなって思ったんだけど、考えてみたら七瀬、まだ結婚式してないじゃない? わざわざ個人的にオフィスを訪ねてくるような親族がいるとは、考え辛くて」


早口で言ったなつみに、私も同感だった。


「なんかゾクッとしたから、非常時サインで課長に報告したの。案の定、名刺を置いていくのは拒否られたから、課長が対応に出てくれたんだけど、結局逃げられちゃって……」
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