外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
いけない。
もともと私からお願いして、お稽古してもらってるのだ。
呑気にお茶室にいる場合じゃないなんて、ほんの少しでも思ってはいけないことだった。


『マズい』と宣言された抹茶を口に運ぶことに、反射的に怯みながら、私は意を決して茶器を煽った。
そして。


「……あれ」


苦くもマズくもない。
いや、むしろ、今までで一番飲みやすかった。


私が戸惑う様子を見て、藤悟さんは「はあ」と声に出して溜め息をついた。
それに導かれて横目を向けると、彼はその場にスッと立ち上がった。


「七瀬さん。今日はここまでにしておこう」


そう言って、私に背を向けて襖に向かってしまう。


「えっ……?」


私は慌てて顔を上げて、藤悟さんの背を目で追った。
お稽古してもらう時間は、一時間。
お茶室に入って、まだ三十分も経っていない。


「藤悟さん、あのっ……!」


慌てて畳に手をつき、立ち上がろうとした。
けれど、襖に手をかけた藤悟さんが、鋭い瞳を向けて私を制す。
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