外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「また転ぶよ。やっぱり君は、無防備だね」

「っ……」


腰を浮かせただけで、反射的にピタリと止まってしまった。
何度も言われる『無防備』に反論したくても、彼に止められていなければ、私は学習能力なく、畳に転がっていたかもしれない。


「す、みません。藤悟さん、私……」

「大丈夫。今日、ここまでで終えても、うちにいる間はいくらでも時間あるんだから」


スッと音もなく襖を開けて、彼は私を肩越しに見下ろした。
私は口ごもるだけで返事ができない。
畳についた手を固く握りしめる私に、藤悟さんはしっかりと背を向けた。


「気になって仕方ないんだろ? 部屋に戻って、さっさと奏介を捕まえて、思う存分説明させるといい」


廊下に踏み出した彼の足の下で、床がミシッと軋む音がした。


「で、俺の前で無になるか、俺に見惚れるか、どっちかの状態になれるようになったら、また稽古してあげるよ」

「あ」


私が呼びかけるのを遮るように、襖はピシャッと閉められた。
私はがっくりとこうべを垂れ、握りしめた拳がカタカタと震えるのを、ぼんやりと見つめた。
< 152 / 226 >

この作品をシェア

pagetop