外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
一人にされて、私はしばらくお茶室で気持ちを整理した。
それから急いで客間に戻り、奏介に電話をした。


もしかしたら、出られる状況にないかもしれない。
それでも、私はひたすら奏介の応答を待った。
何度目かのコールで繋がったけど、『はい』という短い声は厳しく、どこか疲労の色も感じられ、私は第一声から詰まってしまった。


『七瀬。急なことですまない』


おかげで、私の声を聞かないまま、奏介の方から切り出してくれた。


『きちんと説明したいんだが、まだ今会議中なんだ。明日の夜、一度そちらに行く。それまで、待ってもらえないか』


もちろん奏介は、私の用件などわかり切っている。
先手を打ってそう言われてしまい、私はさらに言葉を失くした。
『すまないが切るぞ』と続けられ、私はやっとの思いで声を振り絞った。


「奏介はっ……無事だよね!?」


喉に声が貼りついて、上手く音にならない。
それでも奏介にはちゃんと伝わったようで、電波は切られずに繋がったままだ。


「説明、は、明日でいい。でも、奏介に危険なことは起きてないんだよね?」


縋る思いで、彼に質問を畳みかけた。
それには、『ああ』と静かな返事が返ってくる。


『俺は大丈夫だから、安心してくれ』


落ち着いた優しい声が、私のざわつく胸にストンと落ちてくる。
奏介が『大丈夫』と言ってくれただけで、あんなに荒れて乱れていた私の心は、すぐに凪いで穏やかになっていく。


私は「明日、待ってる」とだけ言って、電話を切った。
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