外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「俺の嫁さんは勇ましい。聞く体制は万全か。じゃあ、早速本題に入る」


奏介はそう前置いて笑みを引っ込め、キリッと表情を引き締めた。
私はゴクッと唾を飲み、彼の説明を待つ。


「七瀬、これは他言無用で頼む。守秘義務の範囲内のことだ。だが、君が何度も訪問を受けたことを所長に話し、『被害者』と認めてもらった。関係者への情報開示として話す。オフィスの同僚や上司には、言わないでもらいたい」

「はい」


奏介がキビキビとビジネスライクに話すから、私も肩に力を込めて心の準備をする。
それを見て、奏介が何度か頷く。


「率直に言う。君を訪ねてオフィスに現れたサラリーマンは、俺が担当している上告審の原告側企業の社員だ」

「え……」

「北国電子産業……親企業を相手取り、特許侵害訴訟を起こした会社で、問題の製品開発を担当した研究者の一人」


淡々と言葉を重ねる奏介の前で、私は大きく息を吸って、胸元をギュッと握りしめた。


「自身が手掛けた製品だ。思い入れが強いのもわかる。控訴審が始まった頃から、被告側企業に対し、嫌がらせ行為を繰り返していたことが判明した」

「嫌がらせ?」

「本当に些細なことだ。調査させて初めて聞いたが、七瀬のことがなければ、裁判自体にはなんの障害にもならないと判断できた。その程度のこと」
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