外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「いつもと大差ない内容の脅迫文が、事務所に寄せられた。直接殴り込みや妨害行為があったわけでもなく、所長や他の弁護士、事務員も本気で取り合う暇はない。しかし……今回俺は、七瀬を巻き込んでいることを知っている。今までのように、簡単に無視できる問題ではない」


奏介はそこで言葉を切って目を伏せた。
わずかの間、逡巡するように唇を結ぶ。
やがて、どこか躊躇いがちにゆっくり目を上げて、私を正面から見据えた。


「結論を言う。俺は今裁判の代理人を辞任する。今日、その旨を所長に申し入れた」

「なっ……」


私は思わず声をあげ、腰を浮かせて膝立ちになった。
奏介よりも目線が高くなった私を、彼は静かに私を見上げる。


「しかし所長は俺が外れることを渋っていて、残念ながら話し合いは平行線だ。まだ決着はついていない」


奏介は眉間に皺を刻み、そこに指を当てて短い溜め息をつく。


「原告側がそんな脅しをかけるのは、追い詰められているという証拠だ。俺が出れば、必ず勝てる。そう言われた」

「そ、そうだよ! だからこそ、奏介は依頼人のためにもこのまま続けなきゃ……」

「七瀬をチラつかされたら、そうも言っていられない」


膝立ちで一歩踏み出した私を、奏介は静かな言葉で遮った。
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