外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私は返事に窮して、口を噤んでしまう。
私が黙るのを見届けて、奏介はどこか自嘲気味に顔を歪めた。


「七瀬に危険が及ばないよう配慮する。結婚したからと言って、そんな理由で辞任など、今後同じことがあったらどうするんだ。……所長には、そう宥められたよ」

「そ、そうだよ」

「俺は弁護士である前に『周防奏介』だ。七瀬、君の夫だ。妻に危険が及ぶ懸念がある中、他人を守るために弁護などできるか!」


奏介は顔を伏せ、髪を振り乱しながら叫んだ。
彼の悲鳴のような声に、私は絶句して身を竦める。


「……俺以外の誰が、君を守れる? 七瀬、君を一生涯守り抜くことは、夫として、俺の一番大事な使命なんだ」


唇を噛みしめ、心の底から振り絞るような声で続ける奏介に、私は心を鷲摑みにされた。
とても熱いものが胸に込み上がり、広がっていく。
なにか言いたいのに、私の唇はわなわなと震えるだけ。
奏介は私から顔を背けたまま、ハッと浅い息を吐いた。


「大丈夫。法廷での弁論は他の弁護士に委ねるが、俺は裏で尽力する。依頼人を裏切ることはない。もちろん、必ず勝訴に導く」


昂った感情を抑えようとしているのか、それまで以上に淡々とした調子で言葉を重ねる。


「俺の申し入れが聞き遂げられれば、君を家に連れて帰れる。俺がこの手で、四六時中君を守ることができる。だから、ほんの少しの間、ここで……」
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