外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「っ、ダメ!!」


私はブルッと身体を震わせ、奏介の首に抱きついた。
私の耳元で、彼が小さく息をのむのが感じられる。


「七瀬」

「ダメ。奏介、ダメ、それじゃ」


私は腕に力を込め、彼の肩口で首を横に振った。


「奏介は弁護士だもの。依頼人を勝訴に導くために、最後までちゃんと、法廷に立って」


奏介の耳元に、そう訴えかける。
彼はピクッと反応して、私を見下ろしているのが感じられる。


「私は奏介の妻だよ? 奏介を支えるのが使命。私がここにいることで、奏介が安心して仕事できるなら、裁判が終わるまでお世話になる」

「七瀬」

「それに、お茶の作法だって。住み込みで教われるんだから、その方が早く上達するだろうし」


半分自分にも言い聞かせて、私はそっと腕を解いた。
奏介が、私の胸の高さから見上げている。


「俺が法廷で代理人に立ちさえしなければ、君に教える時間ができる。その方が……」


奏介が続けた言葉には、私は大きくかぶりを振った。


「私は、ここにいた方がいい。ここなら、藤悟さんだけじゃなく、お義父さんやお義母さんからも教えてもらう機会も、きっとあるよね?」


彼の瞳をまっすぐ見つめてそう言った。
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