外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介は私に、この裁判で最後まで法廷に立つことを約束してくれた。
仕事も順調だそうだけど、万が一を考えると、寂しいからと言って『家に帰りたい』と我儘は言えない。


奏介は忙しい仕事の合間に、私を訪ねてきてくれるし、ほんの少しの時間とは言え、姿を見れば彼の無事を確認できる。
裁判が終わるまでのほんの数週間、我慢するしかない。


だから私は、この居候の最大のメリットである、お茶のお稽古に励んだ。
住み込みで周防流の茶道を学べるという、絶好の環境なのだ。
お義父さんやお義母さんも快く聞き入れてくださったから、一週間に一回ずつと計算しても、藤悟さん一人に教わる場合の三倍のお稽古が受けられるというわけで……。


周防家の大寄せ茶会まであと一週間となった、六月中旬のその日。
私の所作を観察していた藤悟さんが、私が茶器を畳に戻すのと同時に、『ひゅ~』と口笛を吹いた。


「短期間で、随分上達したね。一つ一つの動作に無駄がなく、なかなか優雅だ。……見違えたな」


本当に驚いた様子で大きく目を見開き、パンパンパンと三度手を打つ。


彼のお稽古は、どこか意地悪で、いつもからかわれてばかり。
しかも誰よりも評価が辛い。
そんな藤悟さんから手放しの称賛を受ければ、そりゃあ私も気分がいい。
ちょっといい気になって顔を綻ばせ、大きくグッと胸を張った。
< 164 / 226 >

この作品をシェア

pagetop