外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「あんまり遅くなるとグチグチ文句言ってきそうだ。七瀬、さっさと着付けるぞ」

「って、えっ!?」


着物の包みの中から、薄い襦袢を引っ張り出し、胸元に突きつけてくる奏介にギョッとして、私はひっくり返った声をあげていた。
それには、奏介が怪訝そうに眉を寄せる。


「なんだ?」

「なんだじゃない! 誰かお弟子さんにお願いしてくれるんじゃないの!?」


目を剥いて畳みかける私に、奏介はますます眉間の皺を深めた。


「俺が着付けると言ったろうが。ほら、言い合ってるのも、時間の無駄だ」

「そ、奏介! 自分も藤悟さんと同じこと言ってるって、わかってる?」

「俺と兄貴じゃ意味合いが違う。俺は君の夫なんだから。なにをそんなに慌てる必要がある?」


胸を張って平然と言いのけられ、私は不覚にも返す言葉を失い口ごもった。
私の反応を見届けて、奏介が目を細めてニヤリと笑う。


「夫が妻の着付けをすることのなにがおかしい。というわけで、恥ずかしがることはないから、七瀬、早く脱げ」

「ぬっ……!?」

「大丈夫。すぐに着せてやるから」


腕組みをして、『早くしろ』と言わんばかりにさらりと言う奏介に、私は大きく目を見開いて絶句した。
誰もいないとわかっていながら、助けを求めて狭い茶室内を見渡す。
しどろもどろで目を泳がせる私をジッと観察して、奏介は面白そうにぶぶっと吹き出した。
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