外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「くっくっ……七瀬、なにもそんな、怯えた小動物みたいな反応しなくても」

「だ、だって!」


思わず涙目で反論する私を、奏介が口元を手で押さえながら肩を揺すって笑っている。


「君が俺に頼んだんじゃないか。着付けも教えてくれ、と」

「そ、それはそうだけど、でも……」


家じゃなく、奏介の実家のお茶室だからか、妙に恥ずかしい……。
わずかな間、奏介は私の答えを待っていた様子だったけど、真っ赤な顔で俯く私に焦れたように、ゆっくりと手を伸ばしてきた。


「ひゃっ……」


後ろから肩を抱き竦められて、私は一瞬息を止めた。
反射的に肩を強張らせてしまう私の耳元で、奏介が吐息交じりに笑った。


「俺が着せるの、本気で嫌がってるなら、誰か弟子を呼んできてあげるよ」


耳元で囁かれると、なぜか言葉通りには聞こえない。
『脱いで』と誘惑されてるような気分になってしまい、胸のドキドキが治まらない。


私は躊躇いながら、肩に回された奏介の両腕に手をかけた。
そっと肩越しに振り返ると、奏介が私に目線の高さを合わせるように肩に顎をのせてくる。


「どうする?」


瞳の奥まで、その切れ長の綺麗な目で射貫かれて。


「ぬ、脱ぐから、離して……」


ほとんど言わされたようなものだと思いながらも、私は従順にそう呟いていた。
< 171 / 226 >

この作品をシェア

pagetop