外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
それから二十分の後――。
恥ずかしい思いはしたものの、なんとか無事に奏介に着付けをしてもらい、私は急いで庭に出た。
藤悟さんを呼び戻すと、平謝りしてお稽古を再開してもらった。
彼は苦笑を浮かべてはいたものの、快くお茶室に戻ってくれた、けれど……。


「……おい。お前、いつまでそこにいるつもりだ?」


藤悟さんが堪りかねた様子で茶筅を止め、私の隣で悠然と正座している奏介をキッと睨んだ。
奏介はピクリと眉尻を上げただけで、表情一つ変えやしない。
鷹揚に顎を上げ、どこか斜に構えて藤悟さんに視線を返した。


「俺も今日は少し時間がある。七瀬がいつもどんな稽古を受けているか、どのくらい上達したのか、見学しているだけだ。別に構わないだろ」

「お前がいるから、七瀬さんも肩に力が入ってるじゃないか」

「肩に力が入ってるのは、七瀬じゃなく兄貴の方だろ? 教えるのが本業のくせに、俺が見てると緊張するのか?」


お茶室で二人のやり取りを聞くのは私も初めてだけど、なんとなく……幼い頃からこんな感じでいがみ合って成長してきたんだろうな、と想像できてしまう。
言い合いのネタにされてるのが私じゃなかったら、大人になっても仲良く『兄弟喧嘩』を繰り広げる二人を、微笑ましい目で見れたんだろうけど。
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