外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
藤悟さんはなにかしみじみした様子でそう言って、再び手元に視線を落とした。
点てている途中だったお茶を見遣り、一度小さな溜め息をつく。
私はきょとんと首を傾げてから、大きく頷いてみせた。


「はい! ……と言っても、私はまだ結婚のよさ、全部を知り切れてないし、語れませんけど」


ひょいと肩を竦めて、小さくペロッと舌を出す。
藤悟さんはふふっと柔らかく微笑んでから、新しい茶器を用意して、お茶を点て直し始めた。


「いいな、って言うのは、君みたいな人が……」

「え?」


顔を茶器に伏せているせいで、少し声がくぐもり、聞き取り辛い。
反射的に聞き返したけれど、彼は黙ってかぶりを振った。


そんな藤悟さんの様子にほんの少し戸惑っていると、彼はゆっくり茶筅を止めた。
着物の袂を手で押さえ、私の方に「どうぞ」と、出来上がったお茶が入った茶器を滑らせる。


「ありがとうございます」


私は再び緊張感を高めながら、茶器を手に取った。
着物を着た状態で、初めてのお作法。
藤悟さんに褒めてもらった時のようにしてるつもりでも、確かに、洋服を着てる時と同じ感覚では動けない。
ちょっと悔しい気分で茶器を畳に戻すと、背後から声が聞こえた。
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