外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
なにも、特別な作法が必要なわけじゃない。
美しい所作、立ち居振る舞いは、普段の何気ない日常動作にも通じるもの――。
まさに言った通りのアドバイスを、奏介が身をもって示してくれた。


奏介も藤悟さんも、普段から美しい身のこなしをする。
私はいつも、お茶室以外の所でも目にしてきた。
それを今、思い出した。


「気配り、心配り……」


奏介の言葉を自分の口で繰り返す私に、それまで黙っていた藤悟さんが目を細めた。


「七瀬さんの場合、それほど気張らなくても、すぐに体得できると思うよ」


そう言われて、私は袂を手で押さえたまま、そっと顔を上げる。


「君は、気配りも心配りも、当たり前にできる女性だ。……な? 奏介」


藤悟さんは胸の前で腕組みをして、奏介に横目を遣って同意を促す。
奏介も「ああ」と大きく頷き返し、意識して胸を張るように背筋を伸ばした。


「そこだけは、兄貴とも意見が合う」


どこかふてぶてしく言いのけて、首を傾けて私を見つめる。


「七瀬ほど素晴らしい女性は、世界中探してもいやしない」

「っ……奏介っ!」
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