外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
お家事情で二度目の延期
東京のベイエリアの景色を一望できる新居のタワーマンションから、奏介の実家までは車で三十分ほどの距離。
新居の周りはスタイリッシュな建物が立ち並んでいて、時代の最先端といった雰囲気だけど、奏介の実家は立派な日本家屋で、厳かで風情漂う佇まい。
まだそう何度も足を運んだことはないけれど、来るたびにいつも、九十九折に重なる歴史の重みを感じる。


まるで高級料亭に来たかのような、手入れの行き届いた日本庭園を眺めていると、和心のない私でも凛として背筋が伸びる。
五月も中旬を迎えた今、色とりどりのツツジの花が見事に咲いていて、松や竹の青々とした緑が眩しく、目に痛いくらいだ。


到着してすぐ、お義母さんが門で出迎えてくれた。
奏介の妻として、彼の実家で初めてのお手伝い。
緊張でぎくしゃくする私を、お義母さんが母屋の客間に通してくれた。
お点前をする奏介は、自分の部屋に着替えに行ってしまった。


「七瀬さん、新婚早々なのに、お手伝い、申し訳ありませんね」


気のいいお義母さんは、しゃっちょこばって正座する私の前で、にこやかに着物の包みを広げ始めた。


「まったく……藤悟が早くお嫁さんをもらってくれれば、奏介を呼ばなくてもいいのだけど。……ああ、七瀬さん、これね」
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