外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「何故、俺に言わなかった?」


奏介の視線に、咎めるような色が滲み、私は反射的にビクッと震えた。


「君のことだから、金曜から三日間、全日程で参加するつもりなんだろう?」


鋭い瞳で私を射貫いたまま、彼は質問を畳みかける。


「はい……」


私はわずかに視線を逃がしながら、頷いた。


「ここに来た後、お義母さんに教えてもらって……。休暇申請も間に合ったし、みんな喜んでくれて……」


歯切れ悪くモゴモゴと説明して、私は無意味に胸の前で両手の指を組み合わせながら、上目遣いで彼を見つめ返した。


「俺に日程を伝えなかったのは、『どうせ無理だろう』と思ったからか?」


奏介は私の言葉の途中から、皮肉げな口調で畳みかけてくる。
それを聞いて、私もゴクッと喉を鳴らした。


「……まあ、実際、上告審初日だし、無理なんだが」


黙っている私に焦れた様子で、奏介はどこか自嘲気味に呟いた。
私はベッドに肘をつき、それを支えに上体を起こす。


「伝えなかったのは、『奏介は絶対に来れないだろう』って思ったからじゃない。……ううん、わかってたから、私が頑張りたくて!」

「え?」


私の言葉のニュアンスが、いまいち伝わらなかったのだろう。
彼は困惑したように瞳を揺らした。


「私が茶道を身につけたいと思ったきっかけはね、奏介をちゃんと休ませてあげたかったから」
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