外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
そんな様子がますます不審で、嫌な胸騒ぎで胸がざわざわする。


「奏介、裁判は……」


ゆっくりと波のように押し寄せてくる不安に駆られ、ハンカチを持った手を引っ込めながら訊ねる。
奏介は黙ったまま目を伏せ、ようやく口から手を離した。


「……やられた」

「え?」

「今朝、裁判所の受付に、俺宛の手紙が届けられたそうだ。……例の北国の社員から」

「……!!」


身を乗り出して聞き出した奏介の言葉から、瞬時に事態を把握した。
目を見開き、大きく息をのむ。


「まさか……法廷に立つなって、脅迫?」


怯みながらも勢い込んで訊ねると、奏介は再び目線を彷徨わせ、わずかに逡巡した。
そして、肩を落として息をする。


「いや、要求はなにも」

「え? どういう……」

「今日の日付と時間。それから『裏千家周防流大寄せ茶会』『周防七瀬』『橋本真澄』『神田登紀子』とだけ、書かれていた」

「……は?」


奏介が険しい表情で、早口に捲し立てたその単語。
人の名前にも聞き覚えがない。
なんの意味があるのかまったくわからず、私は思わずぽかんと口を開けてしまった。


私の反応は予想通りだったのだろう。
奏介は気にする様子もなく、顎に手を遣り思案し始める。
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