外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「七瀬がわからずとも無理はない。捕捉して説明すると、『橋本真澄』というのは何代か前の首相夫人だ。うちの親父……当主のお得意様、上客。『神田登紀子』は華道家元のご夫人で、お袋の親友。二人とも、大寄せに限らず茶会には毎回欠かさず招待している、いわゆるVIP客だ」

「そ、そうなの?」


わかってはいたけど、招待客も凄すぎる。
受付のプロだなんて得意になって、気が楽などと思ってはいけなかった。


「でも、私の名前と並べられる意味が……」


一気に腰が引けた気分になりながらも、すぐにそこに疑問が過る。
奏介が、私に応えるべく何度か曖昧に頷いた。


「七瀬以外の二人は、いつも茶席で正客を務める。『神田登紀子』はお袋の茶席。午前中第一席目。『橋本真澄』は親父の、午後第二席目」


奏介は早口で流暢にそう説明して、眉を寄せた。
そこに、二本の深い皺が刻まれる。


「そして七瀬。君は今日一日中茶会にフル参加だろ。……要は、俺に時間の的が絞り切れないよう、計算していやがる」

「え? どういう……」


困惑しながら言葉を挟むと、彼はきゅっと唇を引き結んだ。
そして、キリッと眉尻を上げ、私を見つめる。
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