外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介の裁判の開廷時間は、午後一時。
現在、午前十一時半を過ぎたところ。
とにかく、とにかく急がなければ……!!


奏介にも電話で連絡した。
『着物姿で、優雅ではない挙動をとる四十代前半の男性』に注意を払うよう、伝えてある。
きっと、着物姿の人間を見慣れている彼の目には、私が見る以上に怪しい人物に映るはずだ。


私は午前中の受付時間を終えた後、庭園内を歩いて探してみた。
この時間は、お義母さんのお茶席が始まっている。
受付に連絡がなかったから、きっと、『神田登紀子』さんは、何事もなく正客としてお茶室に入っているだろう。
『牧野晴彦』の目的から判断して、同じお茶席に潜り込んでいる可能性はゼロと見ていい。


藤悟さんのお茶席も、もうすぐ開始時刻を迎える。
参加するお客様はもうお茶室に入っているから、この時間、庭を散策する人の姿は、先ほどよりもずっと少ない。
だからこそ、一人ひとりが目立つ。


他のお客様に紛れながら行動する、と思われる『牧野晴彦』は、この人の少ない庭を敬遠するかもしれない。
だけど、私は自分に問いかけてみた。


着慣れていなければ、着物は窮屈で疲れる。
その気持ちはまだ私にも相通ずるもの。


こういう時、私だったらどうするだろう?
少しでも楽にできる休憩場所を探すんじゃないだろうか……。
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